東京高等裁判所 昭和30年(う)546号 判決
第一、昭和二十九年十二月二十四日頃土佐郡大川村大北川通称樫山山林においてその産物である近藤長太郎所有の檜立木四本時価七千円相当を伐採窃取し、
第二、昭和三十年一月二十日頃長岡郡本山町瓜生野五六八番地川村亀之進方において同人所有の男物オーバー一着外五点時価合計三万一千百円相当を窃取し
たものであるとの事実を認定し、第一の所為は森林法第百九十七条刑法第六十条に、第二の所為は刑法第二百三十五条第六十条に各該当し、右両罪は同法第四十五条前段の併合罪であるから第一の罪につき懲役刑を選択し、同法第四十七条第十条に則り重い第二の罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内で被告人を懲役六月に処する旨判決したことは所論の通りである。
しかし簡易裁判所は森林窃盗につき懲役刑を科する裁判をする権限のないことは裁判所法第三十三条及び同法以外の他の法律に特にその権限あることを定めた規定がないことに徴して明らかであつて、たとえ他の窃盗罪と併合罪の関係にある場合であつても森林窃盗の罪につき懲役刑を選択科刑することは許されないところである。従つて原審が自ら裁判する限り森林窃盗の罪については罰金刑を選択科刑すべきであつたし、若し懲役刑を選択科刑するのを相当と認めるときは裁判所法第三十三条第三項刑事訴訟法第三百三十二条の規定により事件を決定で管轄地方裁判所に移送すべきであつたのである。然るに原審が右森林窃盗の罪につき所定刑中懲役刑を選択し他の窃盗罪との関係において刑法第四十七条第十条を適用し重い窃盗罪の懲役刑に併合罪の加重をした刑期範囲内で被告人を懲役六月に処する旨判決したのは科すべからざる刑を科した点において結局法令の適用を誤つたものでありその誤が判決に影響を及ぼすことが明らかであるから本件控訴は理由がある。
よつて刑事訴訟法第三百八十条第三百九十七条第一項により原判決中被告人に関する部分を破棄するも、本件は当裁判所において直ちに判決するに適しないから同法第四百条本文に則り原裁判所に差戻すべきものとし主文の通り判決する。
(裁判長判事 坂本徹章 判事 塩田宇三郎 判事 渡辺進)